当社では、中小工場の建替えを検討されている経営者からご相談を受けることがあります。先代が建てた建物が老朽化し建て替える必要性は分かるが、何から手を付けるべきか悩まれているケースが多く見られます。
この記事では、中小工場の建替えを検討している経営者が、最初に検討すべき5つのポイントを解説します。
工場など法人施設の建設について相談・依頼先をお探しの方は、「事務所・工場・店舗の建築企画・設計・工事監理」のページもあわせてご覧ください。
目次
建替えたあと工場で生産する商品と設備を整理する
工場では会社により様々なものを生産しています。食品関係であれば衛生面を注意すべきですし、金属加工など騒音と粉塵に気をつけるべき工場もあります。
生産する商品により、工場に求められる性能が異なりますので、まずは生産環境に求める性能を整理する必要があります。
生産する設備にも注意が必要です。機械を置くスペースの確保だけでなく、機械の重量によっては建築の構造体をより強固にする必要が出てきます。例えば液体を貯めるタンクならば、満水時の重量を負担できる構造体である必要があります。
大型な生産設備を使用するときには、その搬入経路の検討が必要です。重い設備の場合には搬入時に吊り下げるためのフックを用意しておくとか、部分的に分解することでコンパクトな搬入経路で済む可能性があるかなど、設備の特性を整理しましょう。
既存工場の課題を踏まえた工場の建替えの要望をまとめる
工場の建替えを検討しているということは、既存建物に課題があるということです。スペースが狭い、建物が老朽化している、生産する商品が代わり事業と工場が合っていないなど。既存工場の課題をまとめましょう。
いまの課題を整理していくと、新築する工場への要望も一緒に出てくると思います。広さや省エネ性など物理的なものだけでなく、働く環境の改善や導線の整理などソフト面への要望を挙げていきます。
先代が建てた時代にはなかった、生産過程に求められる各種基準への対応も考えておくべきです。これら基準を満たすことで新たな商品の生産ができる工場として、単純な建替えではない新たな価値を持った工場にすることができる可能性が広がります。
工場の建替え予算と資金調達の方法を考える
課題と要望が整理されても、すべてを実現できるとは限りません。工場建替えには予算があるからです。事業計画を踏まえた工場建替えの予算を検討します。
今までの建物を単純に建替える場合には、現在の売上と経費や減価償却費を踏まえて予算の大枠を立てることができるでしょう。
もし今の課題を解決するために改善された工場を建てる場合には、それによる生産性の向上や商品の変化による売上のアップなど、事業へのインパクトを考慮した予算組みができます。
今の利益から逆算して毎月の返済額の目処を立てて、そこから予算全体を決める方法もありますが、いくら予算を立てても資金調達が出来なければ実現できません。
潤沢な現金があれば別ですが、一般的には事業用の融資を受けて工場建設をすると思います。その場合には金融機関への説明と理解が必要です。
工場を建替えると事業にどのようなメリットがあるのか、数字をもとにした事業計画を立てて、工場建替えの必要性を金融機関に示す必要があります。
工場の建替え工期と生産設備の移転や調整を含む全体期間を組む
工場の建替えで難しいのが、生産と工場建替えをどのように両立するかです。同じ敷地に建替えるケースと、別の敷地へ移転して建替えるケースに分かれます。
同じ敷地に建替える場合
まず生産拠点を別の場所に確保する必要があります。広い敷地であれば既存工場がない場所に工場を新築する方法もありますし、そこに仮設建物を建てていったん生産設備を移設した上で、既存建物が建っている場所に工場を新築する方法もあります。
敷地に余裕がない場合には、まったく別の場所に仮の生産拠点を確保する必要があります。仮工場の賃料などのコストも考慮する必要があります。
別の敷地に建替える場合
既存工場で生産を続けながら、工場の建設を進められるので、同じ敷地内の建て替えよりはスムーズに進められます。
それでも既存工場から新築工場へ生産設備を移設する期間は商品を生産できません。当社でサポートした事例では、設備移転期間の約1ヶ月分の商品を前もって増産することで、商品出荷ペースへの影響を最小限にしました。
単に建物の工事期間だけではなく、生産設備の移転期間やそれをカバーする増産など生産体制の調整、新工場での設備の試運転と調整期間など、全体工程を組む必要があります。
経営者が主導して工場の建替えプロジェクトチームをつくる
これまで工場への要望や予算、期間などを考えてきましたが、最も大切なものは建替えプロジェクトのチームづくりです。経営者がプロジェクトを主導していくと同時に、それを実務面でサポートする社員をチームに加えましょう。
工場の建替えは、事業に大きなコストインパクトを与えます。そのために最終的には経営者がその可否を決断する必要がありますが、社員に積極的に参加してもらうことで、プロジェクトを通して社員と一緒に事業を考えるよい機会となります。
工場を考える過程で、業務の改善や商品や生産体制の見直しのアイデアが生まれるかもしれません。社員が主役となったプロジェクト編成もあるでしょう。経営者は誰と一緒に考えていくか、チーム作りを意識しましょう。
工場建替え計画の方向性を経営者と専門家が一緒に整理する
工場の建替えは、建物のそのものだけでなく、予算や期間、プロジェクトチームづくりなど、会社全体で取り組む大きなプロジェクトです。最初に計画の方向性を検討できていると、スムーズに計画を進められます。
また工場の建替えは、事業へのインパクトが大きく、検討項目も多岐にわたります。建物の知識だけでなく、予算組みや資金調達など、両面が分かる専門家に検討を依頼することが重要です。
長沼アーキテクツでは、工場の建替えをサポートした実績のある、建築士とファイナンシャルプランナーが、プロジェクトの要件整理から資金調達のサポート、工場の設計を行っています。
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