2018年に高さ350mの木造ビル構想が発表され話題になりました。
実現には様々なハードルがあることが予想されますが、今まででは考えられなかった、
4階建て超の木造耐火建築物で建てようという機運が高まっています。
今回は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造でなく、あえて木造で4階建て超の建物を建てることによる
「建築」「お金」「環境」3つのメリットを書いていきます。
事務所など法人施設の建設について相談・依頼先をお探しの方は、「事務所・工場・店舗の建築企画・設計・工事監理」のページもあわせてご覧ください。
目次
木造耐火は建物軽量化と工期短縮にメリットがある
「建築のメリット」は2つあると考えます。
1つ目は、建物の軽量化による基礎の簡素化です。
延床30坪程度の建物全体の重さを木造と鉄筋コンクリート造で比較すると、
木造2階建てで約30トン、鉄筋コンクリート造2階建てで約160トンとも言われています。
建物全体が軽ければ、それを支える基礎もより簡易なもので対応できます。
埋立地など軟弱地盤で、鉄筋コンクリート造で計画すると杭基礎が必要になるところを、
木造であれば通常のべた基礎で済むこともあるでしょう。
2つ目のメリットは、工期の短縮です。
鉄筋コンクリート造の工事工程は、まず鉄筋を組みその外側にコンクリートを流し込む型枠を設置します。
型枠が出来たところに、コンクリートを流し込み、コンクリートが固まるまで次の工程に進めません。
木造は、工場でプレカットされた柱や梁を現場で組み上げていきます。
近年開発されたCLTという木板を何枚も重ね合わせた厚い板材を使うと、床も短期間で施工することが出来ます。
現場で材料を作る工程が無いので、その分工期を短縮することが出来ます。
木造耐火は工事費抑制と減価償却にメリットがある
「お金のメリット」も2つあります。
1つ目は、工事費の抑制です。
近年人手不足も重なり、建設工事費が上昇しています。
鉄筋コンクリート造や鉄骨造に限らず木造でも上昇が見られます。
それでも木造の単価は他の構法に比べて安価です。
上記にも挙げたように建物軽量化による基礎の簡素化や、工期短縮による現場管理費等の圧縮など、
木造だから安価にできる理由があります。
2つ目は、建物の減価償却期間が短いことです。
4階建て超の木造耐火を建てる目的としては、事業での使用を想定していることが多いと思います。
事業に大きく関わってくるのが、建物の減価償却です。
建物など耐用年数の長い固定資産は、一度に工事費を経費として落とすことは出来ません。
その資産が使える期間をかけて、工事費を少しずつ経費計上していく仕組みが減価償却です。
建物の耐用年数は構法別に定められています。
事務所用途の鉄筋コンクリート造で50年、木造で24年と定められています。
実際には木造は24年で朽ちてしまうわけではないのですが、税制上はそのような設定になっています。
仮に1億円の工事費がかかる鉄筋コンクリート造の建物と、木造の建物で比較してみます。
鉄筋コンクリート造であれば1年間に経費計上できる金額は200万円ですが、木造は約420万円になります。
つまり短期的にみると、経費計上できる額が木造のほうが大きいため、最初の24年間は利益を圧縮できます。
事業主の財務状況にもよりますが、利益が毎年しっかり出ている企業にとっては、節税効果にも繋がります。
木造耐火はCO2排出量の削減と持続可能性にメリットがある
「環境のメリット」を考えていきます。
1つ目のメリットは、工事の過程で発生する二酸化炭素を削減できることです。
日本建築学会による発表によれば、住宅規模の建築工事においては、
床面積あたりのCO2排出量が、木造は鉄筋コンクリート造の約6割に抑えられます。
また木材の中に蓄えられた二酸化炭素は、木を燃やさなければその中に蓄えられたままです。
これは二酸化炭素を閉じ込める役割を果たします。
2つ目のメリットは、国内にある森林資源を活用できることです。
鉄やコンクリートなどの人工物と違い、木材は自然環境により作られる持続可能な建材です。
現在国土にある森林を活用できるだけでなく、将来に渡り植林などをしていくことで準備できる材料です。
木造耐火を実現するための法改正と技術開発
日本には法隆寺を始めとした、古くからの木造建築があります。
一方で木造が建つ都市の大火も数多く発生しており、都市の不燃化が求められました。
1950年の建築基準法の制定により木造建築物の耐火性能が厳しく求められました。
また建物高さや面積が制限されています。
2000年の建築基準法の改正により、決められた性能を満たせば木造でも建築することが可能になりました。
近年になり技術開発が進み、木造での耐火建築物を作ることが可能になっています。
2010年になると「公共建築物等木材利用促進法」が制定されました。
これは低層の公共建築物は原則として木造で建てようというものです。
これにより、戸建住宅だけでなく、不特定多数が利用する施設も木造で建てようという機運が高まりました。
このような法律の改正による法整備と、木造で耐火性能を実現する技術開発が進んだことにより、
木造での4階建て超の建築物を実現する下地が整いました。
メリットを享受した木造耐火を実現しよう
木造は火事に弱いという欠点を少しずつ改善し、法律の改正と技術開発が進んだことにより、
4階建て超を木造耐火で建てるという新しい選択肢が出てきました。
木造耐火には様々なメリットがあります。
環境にやさしく持続可能性があり、建築におけるメリットがあります。
それらは結果としてお金のメリットにもつながっています。
環境と建築とお金のバランスを取った木造耐火を実現することが重要です。
長沼アーキテクツは「建築とお金をデザインする」プロフェッショナルです。
木造耐火の実現をサポートしていますので、ぜひご相談下さい。
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